従来の自動車と比較して、電気自動車は主としてより大きなバッテリー、モーター、インバーター、およびコンバーターを搭載しており、従来の機械式駆動装置を電気制御(半導体を必要とします)に置き換えております。
したがいまして、電気自動車における半導体の需要は、従来の燃料自動車と比較して急激に増加しております。
現在市販されている電気自動車の電流は200~240A、電圧は300~400Vが主流ですが、しかしながら、自動車の性能、および急速充電に対する消費者の要求が高まるにつれ、自動車メーカーにとって大電流化・高電圧化への移行は避けられない開発戦略であると判断されます。
たとえば、Bidiの最新の定格標準電圧は600Vを超えておりますが、ポルシェ・タイカンの定格標準電圧は800Vとなっており、言うまでもなく、急速充電を実現するために充電パイルはしばしば1000Vを超えることがあります。
このような状況下におきまして、高電圧・大電流を実現するための要となるのは、前述の半導体部品です。
したがいまして、車載用半導体は自動車メーカー間の競争における次代の鍵となります。
現状におきまして、車載用半導体のほとんどは、600V以上の環境ではSi MOSFET、およびIGBT(絶縁バーとバイポーラトランジスタ・・・単に高電圧に耐えられる半導体とお考えください)を使用しておりますが、SiCはTesla・Model 3にて使用されており、その後、多くの自動車メーカーにより導入されました。
SiCはIGBTと比べてテール電流が発生しないため、スイッチング損失を90%近く削減することができます。(理論的に、IGBTは抵抗を下げるために導電率変調を行い、少数キャリアとして正孔をドリフト層に注入しますが、その際、同時に少数キャリアの蓄積も発生してテール電流を発生しますので、オフ時にスイッチング損失が大きくなります。)
また、SiCは耐圧が高い(Siの10倍)ため、1000V以上の高電圧に耐えられるほか、抵抗やコンデンサなどの受動部品も削減することができますので、部品全体の小型化が可能です。
さらにまた、IGBTインバーターは高温に耐えられないため、モーターとは別に設置し、制御線に接続する必要があります。
しかしながら、Sicの場合、性能をさらに向上させるためにモーターと直接パッケージ化することができます。
したがいまして、現状の根拠から判断するに、SiCの導入によって電気自動車の加速、バッテリー寿命、充電効率が大幅に向上したということができます。
家電製品の性能は向上していくという特性上から、今後、電気自動車へのSiC採用が多くなることは不可避と判断されており、IGBTはSiCが普及する前段階における過渡期の素子として機能するものと思われます。